日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。今回は、『俵はごろごろ』です。
歌っていると心地よいリズムが満ちあふれてくるこの歌を、作詞したのは野口雨情。作曲したのは本居長世。皆さんおなじみのコンビです。
『俵はごろごろ』(『金の星』大正14年12月号 に発表。歌詞は『定本野口雨情 第三巻』未来社 昭和61年 収録のもの)
作詞 野口雨情(のぐちうじょう、1882−1945)
作曲 本居長世(もとおりながよ、1885−1945)
俵は ごろごろ
お蔵にどつさりこ
お米はざつくりこで
チユチユ鼠はにつこりこ
お星さまぴつかりこ
夜のお空でぴつかりこ |
米が蔵に満ちあふれた状況は、同じく雨情が作詞した『黄金虫』の「金蔵建てた、蔵建てた」の一節を思い出させますが、こちらの歌には成金臭さが全く感じられません。むしろ、蔵の中に貯め込んだ米を鼠に食べられるという「間抜けさ」から、ユーモラスな印象さえ受けます。また、この詞では、「どつさりこ」、「ざつくりこ」、「につこりこ」、「ぴつかりこ」と、末尾に「こ」を加えた語句が並び、歌詞全体に軽妙なリズムと穏やな雰囲気を醸し出しています。ここにも雨情の工夫の跡が見て取れます。
さて、こちらの歌碑ですが、茨城県北茨木市の常磐自動車道・中郷サービスエリア[上り線]内の庭園の中に建てられています。碑の上には鼠の像が置かれていますので、碑を見に行かれる際にはそちらにもご注目下さい。
昔、お米は俵に入っていましたが、近頃はビニール袋や厚手の紙袋入り。今の子供達が、解説なしに、この歌の内容を理解することは難しいでしょう。この歌の寿命は尽きかけているのかもしれませんが、消えてしまうにはあまりにも惜しい作品。どうにかして、未来に歌い継いでいってもらいたいものです。
[参考文献 |
『定本野口雨情 第三巻』未来社 昭和61年] |
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場所:茨城県北茨城市常磐自動車道・中郷サービスエリア[上り線]内
交通:JR常磐線南中郷駅よりタクシー8分。
2006年2月22日更新
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