日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。今回は、『お山のお猿』です。
『さるかに合戦』や『桃太郎』のお話でお馴染みのお猿さん。その猿が出てくる童謡といえば、『お猿のかごや』(山上武夫作詞、海沼実作曲)と『お山のお猿』あたりが双璧なのではないでしょうか。この『お山のお猿』を作詞したのは鹿島鳴秋、作曲したのは弘田龍太郎。『浜千鳥』と同じコンビです。
『お山のお猿』(大正8年に作曲。歌詞は与田準一編『日本童謡集』岩波文庫 収録のもの)
作詞 鹿島鳴秋(かしまめいしゅう、1891−1954)
作曲 弘田龍太郎(ひろたりゅうたろう、1892−1952)
お山のお猿は
鞠がすき、
とんとん鞠つきゃ
踊りだす、
ほんにお猿は
どうけもの。
あかい衣(べべ)きて
傘さして、
おしゃれ猿さん
鞠つけば、
お山の月が
笑うだろ。 |
山にいる猿がユーモラスに描かれていて、この歌を歌うとほのぼのとした気持ちになってきます。当時は、山仕事や狩猟を通じて、猿が住む場所と人が住む場所の間に十分な距離が保たれ、相互不可侵的な状況が生まれていました。猿と人との間が平和だったからこそ、このような詞が生まれたのでしょう。近年各地で山が荒廃し、山から猿の群が降りてきて農作物に深刻な被害を与えていますが、そういった状態ではこのような歌は作れません。
さて、こちらの歌碑ですが、作曲者・弘田龍太郎の故郷である高知県安芸市の浄貞寺に建てられています。弘田は明治25年に安芸郡土居村(現、安芸市土居)に生まれ、父親の転任に伴い3才で高知を離れましたが、安芸市では近年「童謡の里づくり」を標榜し、市内の名所旧跡に弘田の手掛けた童謡の碑を続々建設しています。そこで、これらの内のいくつかを、今後数回に渡って紹介していくことにします。
ちなみに安芸市はプロ野球・阪神タイガースのキャンプ地としても有名ですが、浄貞寺は市営球場からも近いので、キャンプ見学のついでに立ち寄るのもよいでしょう。
[参考文献 |
与田準一編『日本童謡集』岩波文庫 平成元年(36刷)] |
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場所:高知県安芸市西浜浄貞寺
交通:土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線球場前駅より徒歩20分
2006年3月23日更新
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