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「ぶらり歌碑巡り」タイトル

アカデミア青木

http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-43.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜唱歌編
http://www.maboroshi-ch.com/hoso/item-50.html
ラジオ版・ああ我が心の童謡〜童謡編
まぼろし放送にてアカデミア青木氏を迎えて放送中!

碑

第46回 『雨』

 日溜まりの公園で、暮れなずむ街角で、夜のしじまの中で、ひとり「童謡」を口ずさむ時、幼き日々が鮮やかによみがえる…。この番組では、皆様にとって懐かしい童謡の歌碑を巡ってまいります。今回は、『雨』です。
 梅雨に入って鬱陶しい日が続きましたが、こんな状況にぴったりの童謡が、北原白秋作詞の『雨』です。陰々滅々とした曲調で、歌い進むにつれて気が滅入りますが、歌い終わるとなぜか晴れやかな気分になります。心をリフレッシュさせるためには、時として、徹底的に落ち込むことも必要なのでしょう。作曲したのは、前回と同じく弘田龍太郎です。



『雨』(『赤い鳥』大正7年9月号 に発表。歌詞は、白秋の童謡集『とんぼの眼玉』[『白秋全集25』岩波書店 昭和62年 に収録]のもの)
 作詞 北原白秋(きたはらはくしゅう、1885−1942)
 作曲 弘田龍太郎(ひろたりゅうたろう、1892−1952)

 

碑

 

 雨がふります。雨がふる。
 遊びにゆきたし、傘はなし、
 紅緒の木靴(かっこ)も緒が切れた。

 雨がふります。雨がふる。
 いやでもお家で遊びませう、
 千代紙折りませう、たたみませう。

 雨がふります。雨がふる。
 けんけん小雉子(こきじ)が今啼いた、
 小雉子も寒かろ、寂しかろ。

 雨がふります。雨がふる。
 お人形寝かせどまだ止まぬ。
 お線香花火もみな焚いた。

 雨がふります。雨がふる。
 昼もふるふる。夜もふる。
 雨がふります。雨がふる。

 

 『雨』は、その暗いイメージから、”梅雨の歌”と思われがちですが、作中に「線香花火」(季語は「夏」)が登場することから、夏の後の、”秋の長雨”を描いた歌であることがわかります。
 主人公は、「紅緒の木靴」を履き、千代紙や人形で遊んでいることから、女の子。暇を持て余しているところを見ると、一人っ子なのかもしれません。里山や草原に住む雉の鳴き声が聞こえてくることから、家があるのは町中ではなく、郊外。千代紙や線香花火が買えるので、生活水準は中流以上。これは『赤い鳥』の購読者層に重なります。「遊びにゆきたし、傘はなし」は朝の、「いやでもお家で遊びませう」は昼間の、「けんけん小雉子が今啼いた」は夕方の、「お人形寝かせどまだ止まぬ」は夜の、各描写でしょうか?雨に降り籠められた少女の嘆きが、ひしひしと伝わってきます。
 さて、『雨』の歌碑ですが、作曲者弘田龍太郎の故郷・高知県安芸市の西はずれ、「自転車道・赤野休憩所」にあります。コンクリート製の唐傘が歌碑をおおい、碑に近づくとセンサーが作動して、『雨』のメロディーと作曲者に関する解説が流れる仕組みになっています。また、歌碑と解説文が下駄の形をしているのもユニークです。駅からは少し遠いので、太平洋を眺めながらピクニック気分でお越し下さい。

赤野休憩所

赤野休憩所


[参考文献

『白秋全集25』岩波書店 昭和62年]

場所:高知県安芸市「自転車道・赤野休憩所」
交通:土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線赤野駅より徒歩20分


2006年8月8日更新
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[ああ我が心の童謡〜ぶらり歌碑巡り]
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