ご紹介するのは、手のひらにすっぽり収まってしまう、直径32ミリの小さな方位磁石。
ご覧のように、現在のコンパスに見られる角度の目盛りはなく、東西南北の方角すらも文字盤の真ん中に小さく書かれたきりで、主役は子、丑、寅といった干支を示す漢字。そう、時間や方位を、十二支で表現していた頃が偲ばれる、昔の方位磁石なのです。
白くなめらかな本体に、金で文字が入れられて、実用品というよりは、アクセサリーのような高級感があります。素材は象牙でしょうか。ガラスのフチを封している糸にも金が施されて、作られた時代はわからないながら、本当に丁寧な細工だなぁと、すっかり気に入ってしまいました。
外側の文字盤とは別に、中の底にも、紙に刷ったものを貼ったらしい干支が書かれています。あれ? よく見てみたら、外側と内側、干支の順番が逆になっていますよね? どちらが正しいのでしょうか?
船の大好きな旦那サンが、謎を解いてくれました。正しい順番は内側で、外側が逆になっているのは「逆針(うらばり)」といって、「子」の文字盤を船首に合わせると、針が船の進行方向を示すよう工夫されたものなのだとか。
江戸時代から明治ごろまで、和船の航海に用いられたのだそうです。本当にこんな小さい磁石が、船の上で使われていたのかはわかりませんが、船乗りと関係のある、記念品のようなものなのかもしれませんね。
私は、方位磁石つきの小物がなぜかとても好きで、ご縁もあって、少なくない品々と出会うことができました。過去にご紹介したものだけでも、数えてみたら、8点ほど(No.2、No.10、No.60、No.81、No.94、No.110、No.157、No.197)。
改めて眺めてみると、方位磁石つきの商品って、一時期ずいぶん流行したのでしょうね。今だったらとても考えられないブーム(?)に、なんだか楽しい気持ちになります。
方位磁石って、私の中では、旅の象徴だったりします。実際に持ち歩いて使った経験は、もちろんないのですけれど、そばにあるだけで、遠くへ出かけたくなる気持ちにさせてくれるのです。まぁ、趣味のひとつに"方位とり"がありますから、「方位」を感じられるグッズは、どこか大切にしたくなるのでしょうね。
さて、4月がスタートしました。年度初めということで、新たな一歩を踏み出す方も多いと思います。わが家も、今月から娘が幼稚園に入園、生活のペースも大きく変わるので、不安がないわけではありません。
このペースに慣れるまでがまた大変なのでしょうけれど、なんとか頑張ってまいりましょう。早々と満開になった桜を眺めながら 、自分の誕生月ということも手伝って、気持ちを新たにしたのでした。